おすすめ小説『上海魔都探偵団』小島環著

読書

物語の舞台は1924年の上海仏蘭西疎開。

史実のヨーロッパでは第一次世界大戦の惨禍から復興し、中国本土では軍閥が群雄割拠していた時代である。

さて、上海の富豪である方家の跡取りとして生まれた思正は、父親から愛情を一身に受け、何不自由ない環境を与えられつつも、思春期の少年らしく、どこか満ち足りない人生を送っていた。

そして、そんな彼には同い年の仏蘭西人の親友阿蘭がいる。二人の出会いは5年前、思正が10歳の時、反外国勢力の活動家たちによって誘拐され、殺害されるところであったが、そんな彼を救ったのが阿蘭であった。

阿蘭は少年にも関わらず警察顔負けの推理力を発揮し、思正の命を救ったのである。以来二人は親友となり、数々の事件をきっかけに多くの友を得て、彼らの協力を得ながら上海で起きた難事件に立ち向かっていく。

本書はタイトルからも分かるとおり、思正と阿蘭たち少年探偵団が難事件を解決していく青春ミステリーである。

主人公の思正は思春期の少年らしく斜に構えて達観したところがあり、父親の財力を背景に警察官に賄賂を渡して事件に首を突っ込む・・・、端から見たら嫌なガキだが(名探偵コナンの工藤新一をそういう風に見る人もいるので、そう考える人たちから見たら)実は心優しく友達想いで義理堅い少年である。

そして、親友の阿蘭は多くの人が見惚れてしまう金髪の美少年で、推理力も併せて一見非の打ちどころもないように見えるが、自分の興味のないことには全く関心を示さなかったり、人との会話でも自分の話ばかりしたり、警察官に怒鳴られたらその場を逃げ出し危う車にひかれそうになるほど不安定な少年である。

巻末の参考文献を見たところ、阿蘭は発達障害という設定らしい。発達障害の設定に関しては言及は控えたい。

しかし、名探偵シャーロック・ホームズのように細かな手掛かりから難事件を解決する姿はまさに名探偵と呼ぶにふさわしく、事件を解決していく描写は圧巻である。そしてそんな阿蘭と組む思正はさしずめワトソンであろうか。

名探偵コンビが登場する作品がシリーズするのはよくあるが、この二人の活躍をもっと見てみたいと思った。出版社さんにはシリーズ化を求めたい。

また、本作は青春ミステリー小説であるが、1920年代の混沌とした上海の様子を丹念に描いており、ミステリーや青春ものが好きな人はもちろん、歴史好きな人にも刺さる筈である。この記事を読まれた方にはどうか一読願いたい。

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